2020年1月20日、独立行政法人中小企業基盤整備機構機構(中小機構)より、令和元年度補正予算「サービス等生産性向上IT導入支援事業」に係る事務局の公募が公告されました。
IT導入補助金の実務を担当する事務局の募集情報で、補助金の中身についての正式な公告ではありませんが、 そこに記載されている情報から2020年のIT導入補助金について読み解けるものがあります。
そこから見えてきたものは、
- より精度のある計画作成が必要
- 結果的に採択率は上がる可能性が高い
ということです。
事務局公募の「公募要領」からIT導入補助金の内容を読み解く
(1)事業規模
掲載されている事務局公募の「公募要領 3.事業規模等」によると、
- 常時、中小企業・小規模事業者等からの交付申請を受け付けること
- 平均して4ヶ月ごと程度に1回ずつ採択発表を行うこと
- 全体で3万者程度の中小企業・小規模事業者等に対して補助金を交付する事務等を行うこと
との記載があります。
簡単に言うと、補助金事業が開始されてから常時交付申請を受付して、
年間3回ほど採択発表をし、3年間で約3万件採択するということです。
2019年のIT導入補助金の採択数が全体で7,386件(実績)※だったことから、
3年間で約3万件の採択を予定している今回のIT導入補助金は、
単純に3万件を3で割っても1年あたり約10,000件となり、
単年で考えた場合でも前年度比で3.5割ほど採択増が見込まれることになりそうです。
※公募要領 別添3補助要件等について 4.補助予定件数 より引用
(2)補助の対象となる事業
掲載されている事務局公募の「公募要領 別添3補助要件等について」によると、
働き方改革や賃上げ等の制度変更等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が生産性向上に資する
ITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するための事業に対する補助であると書かれています。
生産性向上に資するITツールの導入により、生産性を向上させるという事業目的は前年同様なので、
IT導入支援事業者が登録したITツールを利用して、IT導入支援事業者のサポートを受けながら
各種申請・手続き等を行うスタイルは踏襲されると思われます。
(3)補助の対象者
今回のIT導入補助金の補助対象者は、前年同様に、
- A類型
- B類型
の2つとなるようです。
それぞれについて簡単に紹介します。
1.A類型
◯申請要件
- 中小企業・小規模事業者等であること
- 1年後の労働生産性の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上と、これらと同等以上の生産性向上を目標とした事業であること
- 事務局があらかじめ認定した「IT導入支援事業者」が登録するITツール等を導入する事業であること
- 申請締切日前12ヶ月以内に同一事業の採択決定及び交付決定を受けた事業者ではないこと
- IT導入支援事業者ではないこと
◯加点要件
- 3年間、給与の支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を有し、従業員に表明していること
- 3年間、事業場内で最も低い賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明していること
※加点要件は追加の可能性あり。
◯減点要件
- 申請時点において、過去3年間に類似の補助金の交付を受けた事業者は審査上の減点措置を講じる
2.B類型
◯申請要件
A類形の申請要件にプラスして以下の要件を満たす者。
- 3年間、給与の支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を有し、従業員に表明していること
- 3年間、事業場内で最も低い賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明していること
- 上記2項目については、小規模事業者と公的に定められた取引価格が多くを占める事業者(病院等)は除く
◯加点要件(小規模事業者と、公的に定められた取引価格が多くを占める事業者が対象)
- 3年間、給与の支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を有し、従業員に表明していること
- 3年間、事業場内で最も低い賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明していること
※加点要件は追加の可能性あり。
◯減点要件
- 申請時点において、過去3年間に類似の補助金の交付を受けた事業者は審査上の減点措置を講じる
☆申請要件の実効性担保について
今回のIT導入補助金では、給与の支払い総額増加と、最低賃金の引き上げがきちんと実行されるようにと、以下の内容が定められています。
- 交付後に賃金引き上げ計画を従業員に表明していないことが発覚した場合は、補助金返還を求める
- 3年間の計画終了時点で給与の支給総額増加目標が達成出来てない場合、補助金額の一部返還を求める(※1)(※2)
- 3年間の計画中の毎補助事業年度終了時点において、事業場内最低賃金の増加目標が達成出来ていない場合に、補助金額を事業計画年数で割り算した額の返還を求める(※3)
(※1)付加価値額が目標通り伸びなかった場合や天災など事業者の責めに追わない理由があれば求めない
(※2)給与支給総額を用いることが適切でないと解される特別な事情がある場合、一人当たり賃金増加率を用いることを認める
(※3)付加価値額が年率平均1.5%に達しない場合や天災など事業者の責めに追わない理由があれば求めない
(4)補助率など
1.A類型
ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費等が補助対象経費
- 補助下限額 30万円
- 補助上限額 150万円
- 補助率 1/2
2.B類型
ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費等が補助対象経費
- 補助下限額 150万円
- 補助上限額 450万円
- 補助率 1/2
採択増になるなら採択されやすいのか?
採択増になるなら採択されやすいのか?
2019年のIT導入補助金の申請要件では、労働生産性の伸び率の目標数値を3年後に1%以上、
4年後に1.5%以上、5年後に2%以上とすることとなっていました。
2020年では1年後に3%以上、3年後に9%以上となっており、
前年と比べるとかなり高い目標が求められています。
おそらく審査では、課題やニーズに対応したITツールの導入により、
1年後に3%以上、3年後に9%以上の労働生産性伸び率が本当に達成できる計画か否かを見てきます。
数字を合わせただけのずさんな計画では、おそらく不採択となってしまいます。
採択されるためには、しっかりと自社の強みと弱みを認識・分析して問題点の把握と課題の抽出を行い、
生産性を高めるための業務プロセスの改善と効率化に貢献するITツールの導入により課題解決を図り、
労働生産性伸び率が1年後に3%以上、3年後に9%以上になる計画を作成する必要があります。
まだまだ情報が限定的で何とも言えませんが、「採択増=採択されやすい」とはならないと思われます。
これらの内容は、まだ確定した内容ではありません。
(「内容は差し当たってのものであり、今後、補助対象者の実情等を踏まえて変更となる可能性があります。」と公募要領にも注意書きがされています。)
しかしながら、内容が大幅に変更となることは考えにくく、大枠はこのような形になるのではと思われます。
本記事は、内容の正確性や補助金等の採択を保証するものではございません。
補助金等への応募の判断は、各省庁・事務局からの正式な発表や、公募要領等を確認の上、
ご自身の判断にてお願い致します。